朝鮮王列伝‐第11代目王中宗（1506年～ 1544年）
貴族によって持たらされた王位
中宗は1506年から 1544年まで38年間王位を務めた朝鮮王朝第11代目王。「チャングムの誓い」でチャングムに恋する王様として記憶される方もいらっしゃるかと思われます。
彼は在位は長いですが側近たちに頭が上がらず振り回された王様です。彼の前の王様は彼の異腹の兄で朝鮮史上最凶の暴君燕山君。自分の欲を満たすために悪の限りを尽くした人物。燕山君転覆クーデターには一切関与しておりません。だから力がありませんでした。
中宗は燕山君を恐れ目立たぬよう息を殺して生きていました。そんなある日クーデターが起こります。クーデターの知らせを聞き、遠くで馬のいななきを聞いた中宗は義挙が失敗し、燕山君が自分を捕まえに来たと思い自決しようとしますが妻に止められます。
「あなた。もし馬がこちらに向かっているのなら捕まえに来ています。ですがあっち側に走っているのならあなたを守ろうとしているので義挙は成功したのです。」
下人を走らせて様子を見に行かせると馬はこちらに尻を向けていました。
泣く泣く妻と別れさせられる
中宗が王様に即位すると貴族たちはすぐに王后シン氏を廃位するよう迫ります。それはシン氏の父親で燕山君の側近であったシンスグンがクーデター参加を持ち掛けられた時に参加を拒否したから。彼は政変時に殺されます。貴族たちはシン氏は逆賊の娘だと煽り立て、彼女が王后になってから7日後に強引に廃位させます（王后在位期間は1506年9月2日から9月9日）。シン氏は朝鮮国史上もっとも在位期間が短い王后として記録に残ります。
中宗とシン氏は仲むつましいおしどり夫婦でした。最愛の妻を見たくて宮から妻の実家をたびたび眺める中宗。そしてその心がわかったのか自分の赤いチマ（スカート）を近くの岩にくくりつけて自分の事を忘れないでと願うシン氏。ドラマ「チャングムの誓い」でも中宗がチャングムにチマ岩エピソードを愚痴る場面があります。
異腹の兄燕山君は朝鮮のすべての器量よしは自分の物だと信じ手当たり次第手籠めにしていきました。しかし中宗はたった一人の愛する女性すら守れませんでした。シン氏廃位は王様の権威が失墜した瞬間です。
空白の38年
通常王様を長期間続けていればどんな業績を残したか記憶や記録に残されます。富国強兵、土地改革、法の整備など。ですが中宗にはさしたる特徴がありません。彼は生涯王様の地位を守る事に必死だったようです。中宗が改革を実行しようとすると既得権の侵害を恐れた勲旧派（燕山君を倒した勢力）が王様をすげかえると数回脅迫した事があると記録に残っています。
そんな中即位してから10年目に中宗はチョグァンジョ（趙光祖）という人間を登用させ政治を任せ改革をしようとした時期があります。チョグァンジョは若くて聡明、清廉潔白で非の打ち所がない人物です。王様が変わらなければ民の生活は向上しないという信条を持ち旧勲派の聖域に挑みドンドン既得権をつぶしていきます。彼一人に権力が集中する期間は4年続きますがここで勲旧派が根も葉もない濡れ衣をチョグァンジョに着せて処断しようとします。王の権限をも制限してしまいそうなチョグァンジョの改革に恐れをなした中宗はその訴えを認めチョグァンジョに毒を飲ませて殺します。
チョグァンジョなき後の20数年間は旧勲派のやりたい放題です。彼らは軍事権や人事権すら握っていたと言われます。結果中宗は何をやったかわからない王様、優柔不断の王様というレッテルを貼られます。
中宗関連ドラマ
チャングムの誓い
NHKやTBSで地上波放送され日本でもファンが多いチャングムの誓い。そこで後半の主役として登場する中宗を俳優イムホが演じます。
「チャングムの誓い」は人気作ですのでどのビデオオンデマンドでもコンスタントに配給されています。
2月11日現在U－Nextで視聴可能です。30日間無料視聴可。
王朝の暁～趙光祖
こちらは中宗時代の改革指導者チョグァンジョを主人公にしたドラマです。1995年制作と時代が古く配給しているビデオオンデマンドは見当たりませんでしたがDVD販売なら見つけられました。主人公チョグァンジョ役には往年の大スターユドングン。
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